記事カテゴリ: 外為FX関連事件、判例

2006年7月 3日

札幌地方裁判所 平成16(ワ)第811号 損害賠償請求事件

              主      文

1 被告は,原告に対し,407万8419円及びこれに対する平成16年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は,被告の負担とする。

3 この判決は,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求の趣旨

主文と同旨

第2 事案の概要

本件は,原告が,被告との間で契約を締結して行った「ワールド・ワイド・マージンFX」との名称の外国為替証拠金取引類似の金融派生商品(以下「WWMFX」という。)について,WWMFXの取引は賭博に当たること,WWMFXは,金融先物取引法(以下「金先法」という。)に違反すること,被告が,原告をWWMFXに勧誘し,契約を締結するにあたり,説明義務違反ないし詐欺があったこと,被告が原告を勧誘するにあたり,適合性原則違反があったこと,被告が原告を勧誘するにあたり,消費者契約法4条1項1号の重要事項について事実と異なることを告げ,これにより,原告が,当該告げられた内容が事実であると誤認したこと,取引開始後において,被告に,原告に対する情報提供義務違反があったこと,WWMFXにおいて,取引についての不服申立て方法に不備があったことを主張して,不法行為(ないし,,に基づく使用者責任)又は不当利得(,による無効,の詐欺及びを理由とする意思表示の取消し)に基づき,支払済みの387万円(後記1(5),(6))から返金を受けた16万1581円(同(8))を控除した残額である370万8419円及び弁護士費用相当額37万円の合計407万8419円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年4月15日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

1 基本的事実(争いのない事実以外は,証拠等を併記)

(1) 被告は,先物取引に係る売買及び売買の媒介,取次若しくは代理,商品取引所における売買並びに取引の受託等を業とする株式会社であり,後記の外務員であるA,B,Cの使用者である。

(2) サマセットアンドモーガン社(以下「サマセット社」という。)は,1998年に設立され,1999年に株式会社化したオーストラリア法人であり,銀行ではなく,資本金は255万豪ドル(約1億8000万円)である。同社は,オーストラリアの信用調査会社による格付けでも,ND(格付けできず)という評価を受けている。

(3) WWMFXの取引の仕組みは,以下のとおりである。すなわち,サマセット社は,インターバンクレート(国際間の銀行間の為替取引のレート)とほぼ同じレートをツーウェイプライス(売りと買いで乖離した各希望値)で提示し,顧客は,被告を通じてサマセット社に証拠金を預託して,同社との間で,提示されたレートで円とドルの売買を行う。売買の対象となった通貨の現物の受渡しは事実上予定されておらず,ポジション(建玉のこと)をロールオーバー(取引を乗り換えることにより,決済期を先延ばしにすること)してゆき,最終的には,為替相場の変動を指標にして損益を計算し,売買差金について決済を行う。すなわち,WWMFXは,為替相場を基準とするものの,インターバンク市場につなぐことなく,顧客とサマセット社が相対して行われる通貨売買取引である。

(4) 平成15年1月28日,原告の職場に,被告外務員であるA(以下「A」という。)及びB(以下「B」という。)が来訪し,WWMFXを勧誘した。

(5) 原告は,同月29日,WWMFXについて契約を締結し,被告に対し,証拠金として107万円を支払った。

(6) その後も,原告は,Bや被告の外務員であるC(以下「C」という。)らの勧誘により,証拠金として,以下のとおり,合計280万円を支払った(前記(5)の証拠金と合わせて,以下「本件証拠金」という。)。(乙2)
ア 同年2月14日   73万円
イ 同月18日     73万円
ウ 同月26日     12万円
エ 同年4月1日    72万円
オ 同年5月15日   50万円

(7) 同年9月24日,原告は,被告から,追加証拠金が発生したので,支払うよう指示されたが,支払うことができず,決済の上,取引を終了した。

(8) 平成16年3月3日,被告は,原告の請求により,原告に対し,16万1581円を返金した。(甲94,乙2)

(9) 平成16年10月26日の本件第2回口頭弁論期日において,原告は,被告に対し,詐欺及び消費者契約法4条1項1号を理由として,WWMFXの契約に係る,被告及びサマセット社に対するすべての意思表示を取り消す旨意思表示した。なお,原告は,その際,サマセット社に対する意思表示の取消しについては,同社のためにすることを示した。

2 争点
 WWMFXの取引は賭博に当たるか
 WWMFXは,金先法に違反するか
 被告が,原告をWWMFXに勧誘し,契約を締結するにあたり,説明義務違反ないし詐欺があったか 
 被告が原告をWWMFXに勧誘するにあたり,適合性原則違反があったか
 被告が原告を勧誘するにあたり,消費者契約法4条1項1号の重要事項について事実と異なることを告げ,これにより,原告が,当該告げられた内容が事実であると誤認したか
 取引開始後において,被告に,原告に対する情報提供義務違反があったか
 WWMFXにおいては,取引についての不服申立て方法に不備があったか
 原告の損害 本件において,過失相殺を行うべきか 被告は,悪意の受益者に当たるか

3 争点に関する当事者の主張

(1) 争点(WWMFXの賭博該当性)について

ア 原告

(ア) WWMFXは,為替相場の高低という偶然の事象を利用して,取引の当初から,売買対象たる通貨の現物授受ではなく,差金決済それ自体を目的とする取引である。証券取引法201条,商品取引所法157条,金融先物取引法44条の3第1項,2条5項に照らせば,現在の法体系では,売買の形式をとっていても,上記のように,現物の授受を予定せず,当初からの予定で,相場に基づいて差金決済取引を行うことは賭博に該当し,顧客にWWMFXにつき契約を締結させ,証拠金等を支払わせることは,不法行為を構成するとともに,公序良俗違反(民法90条)として無効である。なお,改正後の外国為替及び外国貿易法(以下,原則として「外為法」と略称する。)も,あくまで現実の為替取引を自由化したにすぎず,WWMFXのように,当初から差金決済を目的とした,机上の為替取引を合法化したのではない。

(イ) そして,WWMFXを開発して販売したのは被告であって,原告ら顧客は,公序良俗違反の原因には何ら関与していないから,民法708条但書が適用され,原告は,不当利得として,預けた金員全額の返還を請求できると解すべきである。

イ 被告

金融・資本取引のグローバル化を背景として,市場への参入,退出を自由にし,市場参加者の自由な活動を確保する必要性が増大し,平成10年,従前の「外国為替及び外国貿易管理法」が改正され,法律名も「外国為替及び外国貿易法」となり,企業又は個人が自由に外貨取引を行うことができるようになり,多様な商品やサービスの中から幅広い選択をすることができるようになった。金融会社としても,自らの創意工夫を生かして,顧客のニーズに合致した多様な金融商品,サービスを提供することが可能となった。改正外為法の下では,誰でも自由に外国為替証拠金取引を行うことができ,不特定多数人を相手にして,反復継続して,業として外国為替取引を営むことも自由である。WWMFXにおけるサマセット社の業務も外国為替取引業であり,顧客との間で通貨の売買を行うことを本質とし,これを業として営むことに法的障害は全くない。そして,外国為替取引が取引所取引でなく相対取引であることも公知の事実であり,いわゆるインターバンク市場という取引所があるわけではない。したがって,ある者が不特定多数人を相手として,業として外国為替取引を行うにあたり,いくらのレートで取引するか,交換ないし売買の対象となる外貨をどのような方法で調達するか,インターバンク市場とつながっているかどうかということは,取引の合法性,有効性と無関係である。なお,このインターバンク市場でさえ,外為法の改正前から,銀行間の相対取引にすぎない。また,WWMFXは,先物取引ではなく,直物取引であるが,現物の引渡しを伴わずに,帳簿上の動きのみで個々の取引を決済する,いわゆる差益取引も,改正外為法の下では自由である。したがって,WWMFXの取引は合法であって,賭博に該当しない。改正前の外為法の下においては,外国為替取引は,全て外国為替公認銀行を通じて行う必要があったが,インターバンク市場とつながらないWWMFXを違法とする原告の主張は,この改正前の外為法の考え方から脱却できていない,誤った見解に基づくものである。

(2) 争点(WWMFXの金先法違反性)について

ア 原告

(ア) 金先法2条4項1号は,金融先物取引について,「当事者が将来の一定の時期において通貨等及びその対価の授受を約する売買取引であって,当該売買の目的となっている通貨等の転売又は買戻しをしたときは差金の授受によって決済することができる取引」と定義している。その趣旨に照らせば,同法にいう先物取引とは,形式的には直物の売買であっても,その決済を先延ばしすることが予定されていて,将来の一定時点においてその時点の相場に基づき差金決済により取引関係から離脱できる仕組みを含む取引すべてを意味すると解すべきである。WWMFXは,直物取引と称する一方で,ロールオーバーという方法により,決済日を自由かつ無限に先延ばしし,決済を将来に行うことを当然の前提としていることからすれば,「当事者が将来の一定の時期において通貨等及びその対価の授受を約する売買取引」に当たる。また,WWMFXが,「通貨等及びその対価の授受を約する売買取引であって,当該売買の目的となっている通貨等の転売又は買戻しをしたときは差金の授受によって決済することができる取引」に当たることは明らかである。したがって,WWMFXは,金融先物取引に該当するところ,市場開設・金融先物取引業の無免許・無許可開業(金先法3条,56条違反),相場による賭博(同法44条3違反),のみ行為(同法73条違反)に当たり,これに係る意思表示は公序良俗に違反し,無効である。

(イ) そして,本件において,民法708条但書が適用されるべきことは,前記(1)ア(イ)のとおりである。

(ウ) また,被告は,公序良俗違反の商品たるWWMFXを,正常な金融商品であるかのように装い,さらに,サマセット社はオーストラリア認可商業銀行であるとか,オーストラリアにおける預金保険類似の保護がある等といった,数々の虚偽の事実を表示して顧客を信頼させ,また,証拠金,追加証拠金の制度やスワップ金利の計算等,取引に関する重要な事実が記載されていない契約書を使って契約をさせた。金先法は,委託者保護を目的としており,これに違反する違法な商品の販売によって,委託者に被害が発生したときは,業者の行為は,強い違法性を有して不法行為を構成し,原告は,被告に対し,損害賠償請求ができると解すべきである。

イ 被告WWMFXは,直物取引でありながら,顧客の意向によりロールオーバーし,決済するまでポジションを持ち続けることができる取引である。金融庁によっても,直物為替先渡取引として定義されており,先物取引には当たらない。

(3) 争点(説明義務違反,詐欺)について

ア 原告

(ア) WWMFXは,顧客が一方的にサマセット社へ証拠金名目で金員を預託した上で行う取引で,為替相場の予測,スワップ金利の仕組み等,その内容の理解自体が非常に困難であるから,被告としては,勧誘するにあたり,WWMFXが,相対の直物取引であること,サマセット社の資本金額,従業員数,業種,取扱い商品,本支店所在地,最近の業績,財産状況,取引先等の同社に関する情報,同社と被告との関係,顧客と被告との関係すなわち相対取引であって利害が対立していること,それにもかかわらず,手数料は同社に支払うこと,被告はサマセット社から手数料を受領していること,スワップ金利の意味,スワップ金利が加減されることによる影響の程度,証拠金に関するルール,追加証拠金が必要となる場合や計算方法等について,顧客となるべき者に明確,平易かつ詳細な説明をして,契約を締結するか否かについて必要な情報を提供すべき義務を負う。そして,その方法は,書面で,勧誘時,取引開始時,取引開始後3か月等に行い,折りに触れて内容の理解度について十分確認すべきである。しかるに,被告の外務員であるA及びBは,原告を勧誘する際及び契約を締結する際,契約書(甲1)等の書面及び原告に対する口頭説明において,被告がサマセット社の代理人であるにもかかわらずそのことについて一言も説明せず,WWMFXが,顧客とサマセット社との間の外国為替直物の相対取引であること等の取引の仕組み,内容等の情報提供も行わなかった。さらに,WWMFXのような証拠金取引において重要な要素をなす,証拠金及び追加証拠金のルールについては,契約書の記載も,外務員の説明も不十分である上,実際の運用との乖離もあった。なお,WWMFXが,顧客とサマセット社との間の直物の相対取引であれば,証拠金は本来不要の筈である。

(イ) のみならず,A及びBは,WWMFXが,インターバンク市場を介さないで行われる顧客とサマセット社間の相対取引であって,顧客とサマセット社及び同社の代理人である被告との間で利益が相反するにもかかわらず,原告に対し,個人投資家が機関投資家と並んで新たに外国為替市場に参加する取引であるかのような説明をした。具体的には,平成15年1月28日の初回訪問時,「WWMFXは,お客様から証拠金を預かって,オーストラリアの銀行であるサマセット社がインターバンク市場で取引をするものです。小さな資金で大きな取引ができるメリットがあります。金利も付くし,ドルが上がる状況なので,ドルが上がると利益がさらに上がります。」と述べ,WWMFXとは,「委託者」である顧客が,「ディーラー」であるサマセット社に証拠金を預け入れた上,同社に対し,その時々の直物相場によるドルの売買を委託し,サマセット社はインターバンク市場において顧客の注文を履行し,その後の反対売買により顧客との差金決済をするとの,内容虚偽の説明をした。

(ウ) サマセット社は,単にオーストラリアの登録された証券ディーラーにすぎず,オーストラリア連邦銀行法に基づく銀行ではなく,預金,送金等,融資等の通常の銀行業務は一切行っておらず,企業規模からも,「銀行」という言葉から連想される企業からは程遠い中小企業であるのに,被告は,パンフレット及び契約書において,これを「オーストラリア認可商業銀行」であり,WWMFXで顧客から預かった資産につき「完全分離保管制度」が適用されて保護される旨表示した。これは,銀行に対して高度の信頼を寄せる我が国の一般消費者を欺罔する虚偽の表示である。

(エ) 被告の説明では,ドル買いの場合,顧客は,年利0.25ないし3パーセントの「スワップ金利」なるものを取得でき,このスワップ金利は,10万ドルに対して発生し,毎日決済される。したがって,例えば,年利0.25パーセントの場合,1枚(10万ドル)あたり年250ドルのスワップ金利が発生し,3000ドルの証拠金との関係では,年利8.33パーセントの高利回りとなる。他方,ドル売りの場合には,顧客は,年利3.25ないし6パーセントという,買いの場合に常に3パーセントを加算した率のスワップ金利を,サマセット社に支払わなければならない。一般に,スワップ金利は,外国為替証拠金取引を行う場合に,交換取引の対象となる通貨を運用した場合の短期金利差に係る負担又は利得により生ずるものであり,金利の高い通貨(例えば,円に対するドル)を買う場合にはプラスの,売る場合にはマイナスのスワップ金利が発生する。しかし,サマセット社は,WWMFXにおいて,現実に通貨の売買をしておらず,スワップ金利発生の根拠を欠くのに,契約書にはスワップ金利が発生する旨記載されている。

(オ) WWMFXにおいては,顧客から預託を受けた証拠金が,本来の用途であるインターバンク市場への再委託のために用いられることが当初から予定されておらず,自転車操業的に,他の顧客に対する支払や,被告あるいはサマセット社の運転資金に使われているのに,被告は,これを秘し,証拠金の預託を受けていたのであり,それが,たとえ手仕舞いを申し入れた一部の顧客に対して清算をしていたとしても,当初から返済の意思も能力もないのにこれを取得していたといえる。

(カ) そのほか,被告は,原告に対し,WWMFXが前記のように賭博に該当し,金先法にも違反するのに,これを秘して契約を締結させた。

(キ) このように,被告は,WWMFXの勧誘に際し,十分な説明をしなかったばかりか,その最も基本的な部分について虚偽の情報を提供し,あるいは最も重要な情報を隠蔽して,原告を錯誤に陥らせ,原告は,これにより,契約を締結して,取引を行った。以上の被告の行為は,説明義務違反として不法行為を構成するばかりでなく,詐欺としても不法行為に該当し,また,原告のこれに係る意思表示は,民法96条により,取り消し得べきものである。

イ 被告

(ア) 平成15年1月28日に被告の担当者が原告を訪れ,パンフレット等に基づいて,WWMFXの取引の仕組み,リスク,追証,取引方法等について説明したところ,原告から興味を示されたので,同月29日午前,再度訪問して,為替の市況と損益計算を中心とした説明を再度行った。被告の担当者は,円とドルの金利差によりスワップ金利が生じること,顧客から預かった資産はオーストラリアのサマセット社が保管し,資産保全が図られていること,ハイリスク,ハイリターンの商品であること等,商品内容を説明している。なお,被告はサマセット社の取次店であって,代理人ではない。それに対して,原告は,取引を始めることを了解したので,被告の担当者は,再度,原告に対し,契約書(甲1)に基づき,取引の危険性,追加証拠金預託の必要が生じ得ること,WWMFXの取引がインターバンクレートで取引できる通貨の直物売買であること,直物取引なので限月はないこと,売買単位,手数料及び証拠金の額,スワップ金利の発生等,取引の特色及び取引方法を説明し,合わせて,取引報告書の見方についても説明した。原告は,これらの十分な説明を聴き,取引の危険性についても納得した上で,契約書末尾に署名捺印し,WWMFXの契約を締結した。同月31日にも,被告の札幌支店管理担当者が,改めて,原告と電話で,WWMFXについて,投機性が高いこと,1円の値動きが30万円のプラスマイナスにつながること,追証のこと,自己責任で取引してもらうことを念押ししたところ,原告は,内容が十分わかっている旨回答している。原告は,取引期間中,何度も被告を訪れ,取引についての説明を求め,担当者の説明を聞いて,納得して帰っている。

(イ) 契約書上,本件取引において顧客の注文がインターバンク市場に取り次がれるとの記載はない。その記載は,サマセット社が顧客に対してインターバンクレートに準じたレートをツーウェイプライスで提供し,その範囲で顧客が売り買いの注文を出す相対取引であることと矛盾するものではなく,インターバンク市場に取り次がれないことは契約書等の記載から容易に理解でき,原告は,契約書を読み,本件取引が相対取引であることを明確に認識した上で,取引を開始し,継続した。被告は,サマセット社を「ディーラー」と表示しているが,この語は,「取引する者」という意味であり,取り次ぐ者を表す英語は「ブローカー」である。また,原告が,自分の注文がその都度インターバンク市場に取り次がれていると信じて,そのことを動機として取引を開始した事実はない。原告は,契約にあたっての指名通知書において,サマセット社の取次店である被告の担当者を代理人とすること,代理人のアドバイスはあくまで情報提供にすぎないことを確認している。なお,サマセット社は,インターバンクレートに基づき,顧客に対し,ツーウェイプライスを提示し,原告は,その範囲で売買の注文ないし承諾をするのであるから,サマセット社の恣意や,被告の裁量の介入する余地はなく,原告とサマセット社との間で,通常の売買契約を超える利害対立はないし,被告が原告及びサマセット社双方の代理人であるとしても,利益相反性はない。原告は,指名通知書に署名捺印して提出したが,この書面には,「私が本通知書で指名した代理人がディーラー並びに取次店であるコスモフューチャーズ株式会社の従業員である場合であっても,私の口座の維持運営責任は全て私にあります。」と記載されている。この趣旨は,サマセット社の取次店である被告が,顧客の代理人でもあることが,法形式的には双方代理に当たると解釈される可能性があるので,このことにつき,顧客の承認を取ったのである。

(ウ) 被告が,原告ら顧客に対し,サマセット社について,「オーストラリア政府認可商業銀行」と表示したことはあっても,「銀行」であると表示したことはない。サマセット社は,オーストラリア証券取引投資委員会により証券ディーラーライセンスを認可されているマーチャントバンクであり,これを日本語に訳せば「商業銀行」となる。この表示の趣旨は,サマセット社が本件取引を行うにあたって法律上の障害がないことを示すことにあり,銀行であると信用させることにはない。また,WWMFXの取引は,我が国銀行の低金利に満足できない顧客がするものであり,原告も,サマセット社が「銀行」であることを信頼して契約したのではない。日本においても,オーストラリアにおいても,銀行とノンバンクの実質的な差はなくなっており,このことからも,「オーストラリア政府認可商業銀行」との表示が虚偽であるとはいえない。原告は,同社が銀行でないことも,契約書を読んで認識していた。サマセット社は,オーストラリア先物取引法の規制対象外でありながらも,自主規制として完全分離保管を実行しており,完全分離保管制度の適用対象であるとの表示も,虚偽ではない。

(エ) 相対取引であっても,サマセット社は最終的には顧客の注文した通貨の引渡し義務を負うのであり,これを自己保有し,あるいは第三者から調達しなければならない。自己保有通貨であっても,それを対外的に運用していたならば得られたであろう金利を取得することは正当であるし,他から調達するときは,当然金利が必要となる。このように,スワップ金利は合意に基づくものとして正当であるし,外国為替取引における事実たる慣習ともいえる。

(オ) 以上から,被告に説明義務違反ないし詐欺行為はない。

(4) 争点(適合性原則違反の有無)について

ア 原告

WWMFXについては,為替取引の仕組みやスワップ金利の仕組みも難解である上,為替変動の予測も素人には困難である。したがって,金融商品販売法8条2項1号,商品取引所法136条の18,同条の25第1項4号,証券取引法33条,43条の誠実公正義務,適合性原則,説明義務を類推し,被告としては,勧誘に際し,経歴,能力,経験,財産状況,投資目的等から,WWMFXに適した者を勧誘する義務を負い,この義務には,顧客の経歴,能力,経験,財産状況,投資目的等を十分調査し,折りに触れ,その理解度を確認する義務も含まれる。しかるに,被告内部においては,顧客の適合性を審査するための内規等の基準はなく,被告ないしその外務員は,原告に対しWWMFXを勧誘するにあたり,投資経験や資産や収入を全く調査していない。原告は,病院給食等を主たる業務とする会社に勤務しているが,英語はできず,投機・投資経験はなく,株式取引の経験もない。外国為替取引等には全く無縁で,知識もなく,日頃は自分の勤める会社の業務に多忙であり,WWMFXのような極めて複雑・難解かつ日々刻々変動する為替相場に応じて高度の危険性を有する取引をするには,不適格な者である。このような原告に対し,WWMFXを勧誘し,契約に至らせた被告の行為は,適合性の原則に違反する。

イ 被告

原告は,雑貨,食料品等の販売を営む会社の管理部長を務める者で,株式取引の経験もあり,外国為替の変動についても十分な理解を有し,自らの相場観を持っていた。したがって,原告はWWMFXについて不適格ではなく,被告の行為に適合性原則違反はない。

(5) 争点(重要事項に関する不実の告知及び原告の誤認)について

ア 原告

原告は消費者であり,被告は事業者であるところ,被告の外務員は,前記(3)のとおり,サマセット社が銀行でないにもかかわらず銀行である旨,WWMFXが原告とサマセット社の利益が相反する相対取引であり,かつ,被告がサマセット社から手数料を受領して,その代理人となっているにもかかわらず,あたかもインターバンク市場で公正な取引が行われ,被告やサマセット社が原告と利益相反の関係にない旨述べ,重要事項に関し,不実の告知(消費者契約法4条1項)をした。これにより,原告は,サマセット社が銀行であり,かつ,本件取引がインターバンク市場で行われ,被告やサマセット社が原告と利益相反の関係にないと誤認した。

イ 被告

原告の主張は争う。

(6) 争点(取引開始後の情報提供義務違反)について

ア 原告

WWMFXの取引の複雑性にかんがみれば,顧客としては,取引開始後も,自分の損益状況や証拠金残高等を考え,さらに,相場の変動を見通してゆかなければ,取引を行うことは不可能である。そして,投機取引一般と同じく,WWMFXについても,取引をいつ止めるかという判断も重要であり,そのためには,被告としては,取引開始後も,顧客に対して,取引の損益状況を迅速かつ正確に報告すべき義務を負う。WWMFXにおいては,毎週1回,オーストラリアから航空便で1週間分の取引報告書が送付されて来たが,航空便自体が,オーストラリアから日本に到着するのに1週間程度かかる。このように,原告に対しては,取引から1週間以上遅れて報告が届く上,報告書の記載内容も複雑であり,ドル表示かつ英語で記載されており,原告ら通常の日本人の顧客が,これを読んで,自己の取引状況を正確に把握するのは不可能又は著しく困難である。このような報告の仕方では,原告は,到底,自らの置かれている状況を十分に理解し,適宜・適切に取引を実行したり中止したりすることは不可能であり,結局,サマセット社の代理人である被告の外務員の言うがままの取引になってしまう。このような報告は,取引開始後の情報提供義務に違反するというべきである。

イ 被告

原告の主張は争う。

(7) 争点(不服申立て方法の不備・不存在)について

ア 原告

WWMFXのように,顧客から電話等で注文を受けて取引することを継続的に行う商品においては,顧客の了解を得ないまま指示に反する取引等が生じ得ることを予め想定せざるを得ない。また,WWMFXは,極めてハイリスク・ハイリターンの商品であり,私設の取引であるため,取引の成立経過の検証も顧客には困難である。さらに,取引当事者の一方であるサマセット社が外国に存在し,我が国では何ら法規制のないことにも照らすと,取引の公正さを担保し,投資家を保護するため,取引に関する不服・異議申立て方法が確立され,それが顧客に十分説明され,その機会が実質的に保障されることが不可欠である。しかるに,原告に送られて来た報告書には,日付から3日以内にサマセット社の管理部書に異議申立てをすることができる旨の記載があるものの,具体的な方法や,連絡先の記載は全くなく,不服申立ては到底不可能である。本件においては,平成15年1月31日には,無益な頻回取引がされたこと,一旦同年2月10日に取引を一旦終了し,翌11日にBからの執拗な勧誘により再開したことについても,原告は,不満を持ちつつも,被告外務員にしか苦情を述べることができなかった。報告書に,取引についての不服申立て方法がきちんと記載されていれば,原告は,本件のような被害を被ることはなかった。

イ 被告

原告の主張は争う。

(8) 争点(損害)について

ア 原告

原告は,被告の前記(1)ないし(4)及び(6),(7)の不法行為により,本件証拠金を支払わされたことにより,合計387万円の損害を被った。このほか,本件訴訟の提起・追行を原告代理人弁護士に委任し,弁護士費用37万円の損害を被った。

イ 被告

サマセット社は,インターバンクレートを常時ツーウェイプライスで提示して顧客の注文に応じており,その取引は,インターバンク市場に取り次ぐ取引と変わりがない。すなわち,原告が本件取引を行ったのは,サマセット社を銀行と信じたこと及び本件がインターバンク市場での取引であると信じたこととは無関係である。原告の損害は,相場の動きによるものであって,被告の行為と因果関係はない。

(9) 争点(過失相殺の適否)について

ア 原告

原告は,WWMFXについて不適格者であるし,被告は,WWMFXの基本的事項について意図的に虚偽の表示をし,重要事実を隠蔽して勧誘した結果,原告は契約を締結し,多額の損害を被ったものであり,過失相殺の前提となる自己責任を問う基礎が欠けている。また,原告に自己責任を問うためには,十分かつ正確な説明,情報が提供されて,顧客が自発的な意思決定をすることが可能であったことが当然の前提となっており,本件ではこれを欠いている。上記のような被告側の故意ないし過失は,その非難可能性の点において,原告側の過失を大きく上回っており,本件においては,仮に原告に過失があったとしても,過失相殺をすべきではない。

イ 被告

前記に主張したような原告の職業,WWMFXに対する理解度等を考慮すれば,大幅な過失相殺がされるべきである。

(10) 争点(悪意の受益者)について

ア 原告

被告は,被告の外務員が,虚偽事実が記載された契約書を用いて欺罔行為を行ったことにより,原告が本件証拠金を支払ったことを知っていたから,民法704条にいう悪意の受益者に当たる。

イ 被告

原告の主張は争う。

第3 当裁判所の判断

1 争点(説明義務違反,詐欺)について

(1) 前記第2の1(3)のとおり,WWMFXは,サマセット社が,インターバンク市場につなぐことなく,顧客とサマセット社が相対して行われる通貨売買取引である。しかるに,証拠(甲14,16,17,93,乙4の1,B証人,原告本人)によれば,原告は,昭和39年3月3日生まれで,D大学を卒業後,病院給食を扱う会社に勤務しており,平成15年当時は管理部部長の地位にあったこと,同年1月中旬ころから,原告の職場に,被告の外務員から頻繁にWWMFXについての勧誘の電話がかかってくるようになったこと,同月28日,被告外務員であるA及びBが原告の職場を来訪し,原告に対し,WWMFXについて,「お客様から証拠金を預かって,オーストラリアの銀行であるサマセット社がインターバンク市場で取引をするものです。小さな資金で大きな取引ができるメリットがあります。金利も付くし,ドルが上がると利益も付きます。」と述べて勧誘したこと,翌29日,AとBが再度原告の職場を訪問し,原告に対し,「お預かりしたお客様の資産は,オーストラリア認可商業銀行『サマセットアンドモーガン』が保管します。完全分離保管制度が適用されますので,安心してお取引いただけます。」と記載されたパンフレット(甲2)やグラフ(甲16),新聞記事(甲17)を見せ,ドルが上がる旨述べ,また,スワップ金利表(甲14)も見せて,外貨預金より有利な金利が付く旨述べて勧誘したこと,これにより,原告は,サマセット社が銀行であり,WWMFXは,同社がインターバンク市場で為替の取引をするものであり,証拠金も,同社が市場に取り次ぐためのものであると信じ,とりあえず10日間だけ取引をすることとし,契約を締結したこと,原告が署名,捺印した契約書(甲1)においても,「小口化と,低廉な取引コスト(売買手数料・通貨交換手数料等),インターバンク市場においてお客様が本当に有利にお取引いただけるのが『ワールド・ワイド・マージンFX』の最大の特徴です。」と記載されていることが認められる。

(2)

ア これに対し,証拠(B証人)中には,原告への勧誘に際し,サマセット社について,商業銀行であると説明した,その理由として,オーストラリアには商業銀行という名称はないものの,サマセット社は,証券の認可を得た会社であり,これを翻訳すれば商業銀行となると聞いていたので,商業銀行である旨説明したと供述する部分がある。しかし,上記のような理由であれば,単に証券会社と説明すれば足りる筈であり,契約書(甲1)には,サマセット社について「オーストラリア政府認可商業銀行」と記載した箇所もあるが,同社について説明する際に,わざわざ「商業」の語を付して,通常の日本語にはない「商業銀行」であると述べたとは認め難い。

イ 証拠(原告本人)中には,原告は,勧誘に際し,パンフレット(甲2)は見せられていないと供述する部分がある。しかし,外務員が勧誘する際には,パンフレットを見せ,あるいは交付するのが通常であり,これを見せたと述べるB証人の証言と対比して,上記の原告本人供述は,必ずしも採用できない。

(3)

ア 前記(1)によれば,被告の外務員であるA及びBは,原告を勧誘するに際し,WWMFXの仕組みについて,契約書及び口頭で,サマセット社が原告から取引を受託し,原告が預託した証拠金を,インターバンク市場に取り次いで,同市場において為替取引を行う旨,虚偽の事実を述べたこととなる。被告は,契約書には,本件取引において顧客の注文がインターバンク市場に取り次がれるとの記載はない旨主張するが,上記(1)の契約書の記載は,市場に取り次いで取引する趣旨以外に理解することはできず,被告の上記主張は採用できない。そして,サマセット社が原告の受託者としてインターバンク市場で取引を行うのであれば,原告との間の利益は相反しておらず,市場の取引において,故意に原告に不利な行動に出る可能性は低いといえるが,WWMFXの取引が原告と同社との間の通貨の相対売買取引であれば,原告と同社は必ず利益が相反する関係に立つのであり,そのような取引をすれば,同社ないし同社と提携する被告が,原告の犠牲において,サマセット社の利益を図る行動に出ることは,容易に予想されるところである。被告は,サマセット社が,インターバンクレートに基づき,顧客に対し,ツーウェイプライスを提示し,原告は,その範囲で売買の注文ないし承諾をするのであるから,サマセット社の恣意や,被告の裁量の介入する余地はなく,原告とサマセット社との間で,通常の売買契約を超える利害対立はないとも主張する。
しかし,個々の取引において提示される売買希望値に恣意が入るか否かが問題なのではなく,今後の値動きの予想との関連で,サマセット社ないし同社と提携する被告が,サマセット社の利益を図るため,故意の情報操作等により,原告に不利な取引を勧める(たとえば,ドルが上がることが予想されるのに,あえて,被告外務員において,ドルが下がるとの予測を述べてドル売りを勧める)可能性があるのであるから,サマセット社が,顧客に対し,インターバンクレートに準じて値段を提示することとされていることをもって,原告と同社とが利益相反の関係にないということは到底できない。このように,WWMFXの取引が,相対取引であるか,インターバンク取引であるかは,顧客の利害に関わる,取引構造の根幹たる最重要事項の一つであって,A及びBは,原告に対し,そのような事項について,原告を欺罔したこととなる。
なお,原告が示され,署名捺印したWWMFXの契約書(甲1)においては,「この直物為替取引が行われるインターバンク市場とは,実際に証券取引所のような取引所がある訳ではありません。」との記載もある。しかし,インターバンク市場が個々の相対取引の集合体であり,証券取引所のような取引所がないことは当然のことであり,本件における問題は,サマセット社が,原告と相対して取引をする立場にあるか,それとも,原告の委託を受けて,インターバンク市場に取り次いで取引をするかなのであって,上記の記載があり,これを原告が認識していたからといって,なんら,被告が虚偽の事実を表示して原告を勧誘したとの前記認定を覆すものではない。また,契約書においては,サマセット社は,直訳すれば「取引する者」を意味する「ディーラー」と表示されている部分がある(甲1)が,このような英語のカタカナ表記をもって,相対取引であることを表示したと認めることができないことは,いうまでもないことである。

イ また,我が国においては,未だ,銀行に対する信頼は高いのが一般であり,前記(1)のように,銀行でないサマセット社について,銀行である旨の説明をするというのは,そのような信頼を悪用して,WWMFXの契約を締結させようとする欺罔行為というべきである。なお,確かに,契約書(甲1)及びパンフレット(甲2)には,サマセット社について「商業銀行」との表示があるが,商業銀行という概念は我が国の制度上存在せず,通常の日本人であれば,「商業銀行」の語を,我が国一般の銀行を指すと認識するといえるから,契約書及びパンフレットの上記表示は極めて紛らわしいもので,上記欺罔行為の認定を動かすものではない。

ウ 以上からすれば,被告の外務員であるA及びBは,原告を勧誘するに当たり,詐欺行為を行ったというべきであり,被告は,民法715条に基づき,その使用者として,これにより原告が被った損害を賠償する義務を負う

2 争点(損害)について

(1) 前記第2の1(5),(6)のとおり,原告は,被告に対し,本件証拠金として,合計387万円を支払った。前記1での判示に照らせば,原告は,被告外務員の欺罔行為によって錯誤に陥ったことにより,WWMFXの契約を締結したのであり,その後,錯誤が解消された事実が認められない本件においては,原告は,被告の欺罔行為により,錯誤に陥ったまま,本件証拠金のすべてを支払ったと認められる。被告は,原告の主張する損害は相場の動きによるものであって,被告の行為と因果関係はないと主張するが,本件における損害は,証拠金の支払それ自体であって,取引の結果損金が発生したことではないから,被告の上記主張は失当である。証拠(乙15)によれば,平成15年4月12日(本件証拠金のうち,前記第2の1(6)のエの72万円を預託した後,オの50万円を預託する前の時点である。)付けの北海道新聞で,顧客が,WWMFXの勧誘に違法があったと主張して,被告に対し損害賠償訴訟を提起したこと,WWMFXは,インターバンク市場に取り次ぐ取引ではないこと,サマセット社は銀行ではないことが記載された記事が報道されたことが認められる。しかし,証拠(原告本人)に照らしても,原告がこの記事を読んだことまでは認められず,乙15の記事をもって,被告の欺罔行為と前記第2の1(6)オの証拠金の支払との因果関係を否定することはできない。

(2) 弁論の全趣旨によれば,原告は,被告の前記不法行為により,原告代理人に委任して,本件損害賠償訴訟を提起することを余儀なくされ,弁護士費用相当額の損害も被ったと認められる。その額は,損害額,本件の進行,難易度等に照らし,37万円が相当である。

3 争点(過失相殺の適否)について

前記1で判示したとおり,被告は,WWMFXの基本的事項について意図的に虚偽の表示をし,重要事実を隠蔽して原告を勧誘し,損害を被らせたものである。しかも,その態様は,パンフレット,契約書に虚偽の記載をして行われた組織的なものである。このことを考えると,仮に取引に入ったことにつき,原告に何らかの過失があったとしても,被告の非難可能性は原告のそれを大幅に上回るというべきであり,本件においては,過失相殺をすべきではない。

第4 結論

以上によれば,原告の不法行為(詐欺)に基づく損害賠償請求及び遅延損害金請求は全部理由があるから,これを認容することとする。

札幌地方裁判所民事第1部

裁判官  原  啓 一 郎

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